多数当事者間の実質的公平

平成28年12月19日大法廷決定(民集70巻8号2121頁)は、普通預金等が遺産分割の対象となるには、相続人全員の合意が必要か、最高裁が判断した事案です。

相続人が数人ある場合、相続開始とともに被相続人の財産は相続人の共有に属し、この共有関係を協議によらず解消するには、共有物分割訴訟(当該物のみ)でなく、遺産分割審判(相続財産全体)による。

遺産分割において被相続人の財産をできる限り広く対象とし、また、現金のように評価に不確定要素の少ない、遺産分割の調整役となる財産を遺産分割の対象とする要請がある。
普通預金等は、現金に類似し不確定要素が少ない。
被相続人の権利義務の承継に当たり共同相続人間の実質的公平を図るため、個の共有物分割ではなく、全体の遺産分割審判が必要。

決定理由の一つとして、
相続開始時の残高で預貯金債権を、当然に相続分で分割すると、残高が変動するたび、預貯金契約当事者に煩雑な計算を強いるので、合理的意思に反する。
次に、定期貯金債権について
定期預金債権に払戻しの制限がある以上、共同相続人は共同して全額の払戻しが必要、単独で行使できないため当然に分割する意義に乏しい。

よって、共同相続された普通預金等は、相続開始で当然に相続分に応じて分割せず(合意なく)、遺産分割の対象になるとした。

では、
区分所有者の団体は、全員で法律上の擬制により当然に成立、区分所有者の加入・脱退を個別的に問題にできない。
区分所有者が、区分所有者である限り団体的拘束を受ける。

議決要件の厳格化が団体的拘束を弱め、議決要件の緩和が団体的拘束を強める。
議決に反対する区分所有者を拘束するためです。

マンション管理は、人間関係の調整が基本かつ重要、紛争の解決には、事案ごと合理性、妥当性の追求が必要。

平成28年12月19日大法廷決定に倣い、
団体的拘束のなか管理組合が、当事者の実質的公平を図る場合、対象となる事案を広げる。
不確定要素の少ない調整役を加え、かつ、権利関係の複雑化を避けると考えてみた。

2019年10月07日