立替えか修繕か判断

建替えか修繕(改修)か判断する指針として、国土交通省が「マニュアル」を作成(平成15年・平成22年改訂)
それぞれの改善効果・所要費用により比較検討

時系列で抜粋すると
1.老朽度の判定・(希望)改善水準の設定
(老朽度の判定)
管理組合における簡易判定後+専門家による老朽度判定による
定期調査等、過去の調査結果を有効活用し状況を踏まえ、必要な診断・検査を追加しての判定が合理的
判定は、「構造安全性」「防火・避難安全性」「躯体及び断熱仕様に規定される居住性」「設備の水準」「エレベーターの設置状況」の5項目を設定
設備の水準(居住性)は、「共用部分」と「専有部分」を区分し評価

(不満やニーズの把握 )
修繕(改修)に期待する住宅の水準、建替えに期待する住宅の水準や住まい方
アンケート等により把握

(要求改善水準の設定)
要求改善水準から工事内容を決定し、それぞれの改善効果と所要費用を算定

2.修繕・改修の改善効果の把握と費用算定
「構造安全性」及び「防火・避難安全性」は、居住者の安全性(人命保護)に関わるため、全て問題のない水準まで性能回復が必要
「躯体及び断熱仕様」「設備の水準」「エレベーターの設置状況」の居住性は、各区分所有者の不満(例:給排水管等の設備の老朽化・陳腐化、部屋が狭い、エレベーターが欲しい、電気容量不足等)を的確に把握し、状況を踏まえ自由に水準を設定

3.建替えの改善効果の把握と費用の算定
修繕・改修では困難であるが、建替えでは必ず実現したいとする水準となり、建替えは要求改善水準が高くなるのが一般的
全区分所有者の意向のうち共通なものに加え、建替時の新築マンションにおける一般的性能水準を踏まえ、建替えの基礎的・必須な水準が設定される
マニュアルでは、修繕(改修)では困難であるが、建替えでは実現が期待できる、駐車スペース、敷地内オープンスペースや植栽、共用施設(託児施設、購買施設等)、住戸外の収納スペース等を追加して設定

4.建替えか修繕・改修かの判断
(改善効果のみにより建替えか修繕・改修かの判断が可能な場合)
ケース1:修繕・改修では安全性の確保ができない場合 ⇒「建替え」と判断
ケース2:修繕・改修では改善ニーズの強い居住性に関する要求改善水準が実現できない場合⇒「建替え」と判断
ケース3:建替えの場合に、要求改善水準を実現できない(例えば、住戸面積が小さくなる)場合⇒「修繕・改修」が有利と判断

(改善効果と所要費用を総合的に比較して判断する場合)
建替えは、修繕・改修の場合に比べて工事規模・所要費用は大きくなるのが一般的
また、建物全体が一新されるため、ニーズに基づく要求改善水準を実現し、さらに建替えを行うからには実現したいとする要求改善水準をも上回って実現できる可能性

一方、修繕(改修)は限られた項目のみが工事対象、また、その改善レベルも要求する改善水準に近いものに留まるのが一般的

結果、建替えと修繕(改修)とでは、実現水準は大きく異なる
すなわち、建替えは「ハイコスト・ハイリターン」、逆に、修繕(改修)は、建替えに比べ相対的に「ローコスト・ローリターン」
ハイコスト・ハイリターンの建替えとローコスト・ローリターンの修繕(改修)を機械的・客観的に比較するのは困難・不適切

最終的には、区分所有者の価値観に基づく判断の総意によるが、マニュアルでは、改善効果・所要費用により比較検討
建替えの修繕(改修)に対する優位度によって立替えか修繕(改修)かを判断

「修繕」:劣化した建築物の性能及び機能を実用上支障のない状態まで回復させる
「改修」:劣化した建築物の性能及び機能を初期の水準以上に向上させる
参照:「マンションの建替か修繕かを判断するためのマニュアル」国土交通省(平成15年)平成22年改訂

2020年10月25日